私たちがパソコンなどのデジタルデバイスを使用する際、多くのデータとやり取りをしています。文書や画像、音楽や動画ファイルなど、これら全てが何らかの形でデバイスに保存されます。
しかし、これらのデータがどのようにして整理され、アクセス可能な状態に保たれているのでしょうか。ここで重要な役割を果たすのが「ファイルシステム」です。
ファイルシステムは、デジタルデータの世界の根幹をなす要素であり、コンピュータやスマートフォン、タブレットなど、あらゆるデジタルデバイスに内在しています。これがなければ、私たちが普段当たり前のように使っているデジタルデバイスは、単なる無秩序なデータの山に過ぎなくなります。
本記事では、ファイルシステムとは何なのか、どのような機能や種類があるのかについて分かりやすく解説します。
ファイルシステムとは
ファイルシステムとはOSの機能の一部で、記憶装置(ストレージ)にあるデータを整理・保存・アクセス可能にするためのシステムのことをいいます。記憶装置上のデータは、常にユーザーから見て分かりやすいように保存され、形式的に並んでいるわけではありません。1つのファイルやフォルダでも複数のデータ(断片)に分けられ、補助記憶装置上で無秩序に分散して配置されることがあります。
ファイルシステムは、図のように記憶装置上に無秩序に配置されるデータの断片を整理して、ファイル・フォルダ形式でユーザーがデータにアクセスしやすいようにしてくれます。
※ファイルのデータ(断片)が記憶装置上で分散し、散らかっている状態のことを「ファイルの断片化」と呼びます。この状態だと読み書き速度が遅くなってしまうので、可能な限りデータが連続的に配置されることが望ましいです。ファイルシステムは「ファイルの断片化」に対処するため、データの配置を整える機能も提供しています。
ファイルマネージャー
ファイルシステムのユーザーインターフェースとなるのが、ファイルマネージャーと呼ばれるソフトウェアです。Windowsではファイルマネージャーとしてエクスプローラーがデフォルトで組み込まれており、よく使用されています。
ファイルシステムの機能
ファイルシステムの機能について、主要なものをいくつか紹介します。
データの組織化
ファイルシステムは、データを効率的に管理するために、それらを「ファイル」と「フォルダ」(またはディレクトリ)という単位に組織化します。ファイルはデータの実体を持ち、フォルダはこれらのファイルや他のディレクトリを階層的に整理するためのものです。これにより、データは階層的な構造で保存され、ユーザーやアプリケーションが必要な情報を簡単に見つけてアクセスできるようになります。
記憶装置上のスペースの割り当て
ファイルシステムは、記憶装置上の空きスペースを管理し、新しいファイルに対して適切な場所を割り当てます。また、ファイルが削除された際にはそのスペースを再利用可能にします。
メタデータの管理
各ファイル・フォルダには、メタデータが関連付けられています。メタデータとはファイルやフォルダに関する付帯情報が記載されたデータのことで、以下のようなデータを含みます。
- ファイル(フォルダ)名
- 作成者
- 作成・変更日時
- アクセス権限
- 保存場所(パス)
- サイズ
- 属性(読み取り専用,隠しファイルなど)
メタデータがあることで、ユーザーはファイルの整理や管理がしやすくなります。ファイルシステムはこれらのメタデータを管理し、ファイル・フォルダに関する重要な情報を提供します。
アクセス権限とセキュリティ
ファイルシステムはファイル・フォルダへのアクセスを制御し、セキュリティを確保します。これには、特定のユーザーやグループに対する読み取り、書き込み、実行の権限を設定する機能が含まれます。
データの整合性とエラー修正
ファイルシステムはデータの整合性を保つために重要な役割を果たします。電源の問題やシステムクラッシュが発生した際に、ファイルシステムはデータの損失や破損を防ぐための機能を持っています。
読み書きパフォーマンスの最適化
ファイルシステムは各記憶装置の特性に合わせて、データの断片化を最小限に抑えて記憶装置の空間を最適に利用するためのアルゴリズムを活用し、データの効率的な読み書きを実現します。
ファイルシステムの種類
ファイルシステムは、異なるOSや用途に応じて、様々な種類のファイルシステムが開発されています。ここでは、いくつかの主要なファイルシステムの種類とその特徴を紹介します。
NTFS
NTFS(NT File System)は、Windows(Windows XP以降)で主に使用されているファイルシステムです。セキュリティ、データ復元、大きなファイルサイズとボリュームサイズ1のサポート、ファイル圧縮などの機能を提供します。
APFS
APFS(Apple File System)は、Apple製品向けに設計されたファイルシステムで、パフォーマンス、セキュリティ、効率性を重視しています。スナップショット2やクローン3、暗号化などの先進的な機能をサポートしています。
ext4
ext4(fourth extended file system)は、Linuxで一般的に使用されています。extシリーズ(ほかに、ext1/ext2/ext3がある)の最新バージョンです。大きなファイルサイズとボリュームサイズ1のサポートや高速な読み書きができることが特徴です。
FAT32
Windows, macOS, Linuxなど多様なOSでサポートされています。古くから存在するファイルシステムで、互換性の高さが最大の特徴です。USBメモリやSDカードなどのリムーバブルメディアでよく使用されますが、4GBを超えるファイルの保存には対応していません。
exFAT
FAT32の拡張版で、大きなファイルサイズとファイルシステムサイズに対応しています。USBメモリやSDカードなどで大容量データを扱う場合に適しています。
ファイルシステムの比較表
上記で紹介したファイルシステムの比較表を以下に示します。
ファイルシステム | 特徴 | 対応OS | 最大ファイルサイズ | 最大ボリュームサイズ | ジャーナリング | 暗号化サポート |
---|---|---|---|---|---|---|
NTFS | セキュリティ、データ復元、大きなファイルサイズのサポート | Windows | 16TB | 16EB | 有 | 有 |
APFS | パフォーマンス、セキュリティ、効率性の強化 | macOS, iOS | 16EB | 16EB | 有 | 有 |
ext4 | 大きなファイルサイズとボリュームサイズのサポート、読み書きが高速 | Linux | 16TB | 1EB | 有 | 有(拡張機能を使用) |
FAT32 | 幅広い互換性、4GBまでのファイルサイズ制限 | Windows, macOS, Linux | 4GB | 2TB | 無 | 無 |
exFAT | FAT32の拡張版で、大きなファイルサイズとファイルシステムサイズに対応 | Windows, macOS, Linux | 16EB | 128PB | 無 | 無 |
※ジャーナリングとは、データの整合性と回復力を高めるために使用される機能です。データを実際に記憶装置に書き込む前に、変更内容を「ジャーナル」と呼ばれる特別な領域に記録します。電源の喪失やシステムクラッシュによりシステムが停止した場合、ジャーナルに記憶された情報をもとにデータを復元できます。
フォーマット
ファイルシステムには、フォーマットという機能があります。これは、記憶装置を特定のファイルシステムで初期化し、データを保存するための構造を作成するプロセスです。これは、新しい記憶装置を使用する前や既存の記憶装置を再利用する際に行われます。
フォーマットを行うことで、元々は異なるファイルシステム構造の記憶装置を使用できるようになりますが、既存のデータは消去されます。
まとめ
ファイルシステムの機能や種類について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。私たちがパソコンでファイルやフォルダを扱うときは、裏側では必ずファイルシステムが重要な役割を果たしているということをご理解いただけたかと思います。
ファイルシステムに限らず、OSの機能や役割に関する記事は今後も書いていく予定なので、引き続きよろしくお願いします。